「アプリケーションラボ」は、Digi-Key社のご協力をいただいて、Digi-Key社が公開している新製品や技術情報を日本語でご紹介するWebページです。基礎技術から最新技術まで有益な情報を公開していますので、是非ご活用ください。
今回は、長期間にわたってIoT機器を運用する際に、環境発電を使うことで電池を不要にする方法について解説した記事をご紹介します。
■数十年間のIoTセンサ運用での環境発電と電池の比較 IoTの普及に伴って超低消費電力で動作するICが利用できるようになり、マイクロアンペアやミリアンペアで動作する回路やシステムが増えています。IoT機器は、センサを搭載してデータを長期にわたって取得するという用途が多いので、電池の交換などはできるだけ行わないようにする必要があります。
そこで、環境発電を利用することができれば電池を使用せずにすみます。エナジーハーベスト(Energy Harvesting)とも呼ばれていますが、太陽光などの自然エネルギーを利用して電力を得る技術です。環境発電で得られる電力は一般的に少量なので、電力を貯蔵できるようにして必要に応じて電子機器に供給するように構成します。電力を貯蔵するには、充電式電池を使用する方法とスーパーキャパシタを使用する方法があります。
スーパーキャパシタは、電気二重層コンデンサが正式名です。電解液に電極を浸すと、電極の界面に分子1層分の薄い層が生じ、その外側に拡散層が生じます。この現象をドイツのHelmhortzが1879年に発見し、電気二重層と命名しました。電気二重層コンデンサは、2つのコンデンサを直列に接続したのと等価になっていて、分子1層分の厚みで電荷を蓄積することができます。
スーパーキャパシタは、化学反応ではなく物理的に電荷を貯蔵しているので、迅速に(数ミリ秒から数秒で)充/放電ができます。また、充放電サイクルの回数がほぼ無制限です。一般的な充電式電池は、充放電サイクル数に制限があり、自己放電も増加していきます。より多くの電力を貯蔵したい場合や長時間の運用が必要な場合には充電式電池が適しているのでスーパーキャパシタとのトレードオフが必要で、両者を混在して使用することも考えられます。
【アプリケーションラボ】の解説では、環境発電で得た電力を貯蔵して負荷に供給する回路に、アナログデバイセズ社のLTC3331を使用した例を紹介しています。LTC3331は、環境発電による電池の充電機能を備えたナノパワー降圧/昇圧DC/DCレギュレータです。収穫入力電圧は3.0~19Vですが、電池電圧は最大4.2Vまでとなっています。出力は、50mAで1.8~5Vに設定できます。また、2個のスーパーキャパシタを直列で使用することもできます。
ここで解説されているデバイスは、マルツオンラインのウェブサイトで購入できますので、是非参考にしてください。
スーパーキャパシタ 【FC0V474ZFTBR24】 508円 |
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ナノパワー昇降圧DC/DCコンバータ 【LTC3331EUH#PBF】 1,218.29円 |
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超低Iq降圧コンバータ 【TPS62740DSSR】 385円 |
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下記の2本の解説記事も同時に公開しました。合わせて参考にしてください。
■基礎解説:IoT、IIoT、AIoTが産業用オートメーションの将来である理由 IIoTは産業用IoT、AIoTは人工知能IoTのことで、生産管理などの産業用アプリケーションやAI技術を使った研究やオートメーションにIoTを利用することが進められています。すなわち、より大規模なシステムにIoTが導入されるようになりましたが、ここではIoTに対応していない旧式の産業用装置にIoTをどのように組み込めばよいかについて解説します。
■IoTとM2Mの通信および設計の違い IoTとM2Mの違いはわかりにくいですが、似て非なるものです。ここでは両者の違いを明確にし、それぞれの設計要件と実装要件について解説します。さらに、最新のオーバーザエア(無線/ワイヤレス)や、ネットワーク機能を強化して参入障壁を下げる多層セキュリティなどの新しいM2M機能についても説明します。
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