今回は、高機能な車載機器を開発するためのプラットフォーム「R-Car M3 Starter Kit」をご紹介します。R-Carは、ルネサスエレクトロニクス社が開発した車載機器用のSoCです。ルネサス社では、従来からNECエレクトロニクスが開発したV850系と日立製作所が開発したSH系のマイコンを車載機器用として販売していましたが、MPUに加えて周辺機能も搭載したSoCとしてR-Car M1を2011年に発表しました。
R-Car M1は、カーナビに必要な機能をワンチップにしたものです。その後、車載システムの電子化が高度化するにつれてR-Carのファミリも拡大されていき、現在はADAS/自動運転用のR-Car V3H、R-Car H3、汎用性を高めたR-Car M3、ディスプレイ搭載車載機器用のR-Car D3、R-Car E3などがあります。
R-Carファミリは自動車専用なので、自動車メーカーの関係者以外は入手が難しいデバイスです。ルネサス社は、R-Carを使った開発が進むにはソフトウェア企業や大学などでも自由に使える開発環境が必要であると考えて、R-Carスタータキットを用意しました。比較的低価格なので、1人に1台を用意することが可能であり、開発効率の改善が期待できます。
< R-Car M3 Starter Kitの外観 >
R-Car M1にはArm Cortex-A9とSH-4Aを搭載したR-Car M1AとSH-4Aのみを搭載したR-Car M1Sがあり、動作周波数は800MHzでした。現在のR-Car M3にはArm Cortex-A57(1.7GHz、デュアルコア)とArm Cortex-A53(1.3GHz、クワッドコア)、リアルタイム処理用にデュアルロックステップコアのCortex-R7を搭載しています。デュアルロックステップとは、それぞれのコアで同じ処理を行い、結果が同じなら実行させる安全機能です。
「R-Car M3 Starter Kit」は、10cm×10cmのベースボードにR-Car M3 SiPが搭載されていて、ヒートシンクとファンが付属しています。ベースボードには車載機器の開発に必要な周辺インターフェースが実装され、R-Car M3のすべての端子を使用できる440ピンの拡張ポートが搭載されています。そして、AGLやGENIVIなどのオープンソースコミュニティで標準化された車載Linuxプラットフォームを容易に構築することができます。したがって、小規模なコンピュータビジョンの開発から、統合コクピットのような大規模なシステムまで、幅広い用途で利用できます。
なお、Automotive Grade Linux(AGL)は、コネクテッドカーで利用するオープンプラットフォームを開発するためのLinuxファウンデーションによるプロジェクトで、Linuxをベースに新しい機能や技術の業界標準を目指しています。また、GENIVIアライアンスは、BMW社など8社が結成したオープンソースの車載用インフォテインメントの開発を推進する非営利団体です。
R-Car M3 Starter Kit 【RTP8J77961ASKB0SK0SA05A】 参考価格:108,800円 |
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