資料・技術情報

7MHz ダイレクト・コンバージョン受信機の試作 その4【2次試作 製作編】

◎基板設計

2次試作の構成をあらためて図43に示します。
AF AMPとLPFはオペアンプのNJM4558で構成し、BEFはCRのみです。

▽2回路入り汎用オペアンプ【NJM4558D】
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/2044/

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図44に部品配置図を示します。
基板の型番がSA602ARX3となっています。
1次試作がSA602RX1なので2次試作ではSA602RX2となるのですが、実は、BEFが無い構成のSA602RX2が存在します。
SA602RX2の基板設計を終了してから、BEFを追加することを思いつきました。

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BEF部の構成部品はCRのみなのですが、図44のように意外と部品面積があります。
BEFの無い基板SA602RX2からこの部分を追加するだけで、けっこう、基板設計に時間がかかっています。
SA602RX2の基板サイズでは部品は配置できるのですが、配線ができなくて、基板の縦方向のサイズを大きくしています。
図45に各基板サイズを示します。

ケースはタカチのMB-3がベースです。
これに電池ケースを収納し、RF GAIN用ボリュームを実装すると、基板の縦方向が80mmで限界です。

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◎基板製作

基板サイズが80×80なのでサンハヤトの感光基板NZ-P11Kで製作しています。
写真6に基板の外観を示します。
1次試作より部品点数が増えましたので、けっこう作りごたえがあります。

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◎評価

★実験基板と1次試作で局発部の定数が異なる原因が分かる

1次試作時に実験時と比べて局発の発振周波数が低いという現象がありました。
実験時はユニバーサル基板、1次試作はプリント基板なのでストレー容量の違いが原因だろうということで、コンデンサ定数の変更で対処しています。
2次試作の基板を組み上げた後、1次試作基板と比較するとトリマーコンデンサの色が違うことに気づきました。
トリマーコンデンサは局発部とアンテナ入力部の2カ所で、容量が異なります。
容量は部品のボディで色が異なり、赤と黄色です。
1次試作と2次試作を比べると色が逆になっています。
1次試作ではアンテナ入力部と局発部の取付位置が逆になっています。
逆にすると局発部のトリマーコンデンサ容量が増える値なので局発周波数も下がります。
この件の原因は部品取付ミスということです。
自分で設計して自分で組み上げるので、「部品実装ミスは絶対に無い」という思い込みです。
そもそも、トリマーコンデンサの容量が2種類あるということが良くないことです。

★AFボリューム最大で発振する

AFボリュームを最大にすると低域で発振する現象が発生しました。
1次試作ではこの現象はなかったのですが、2次試作では全体のゲインを上げています。
この現象はスピーカAMP部の定数を一部変更することで対処しています。

★海外放送が混入する

1次試作では気が付かなかったのですが、2次試作機では昼間に6MHz帯の国内放送が混入します。
さらに、夕方ともなると7MHz帯の海外放送局が強烈に入ります。
完全な設計ミスで、ブロック構成に問題があります。
結局、図46のようにアンテナ入力部にBPFを設けることでこの問題を解決しました。
BPFはLCによる方式です。
この部分は市販の部品がないので、L(コイル)を手巻しています。
当初、Lの製作仕上がりが良くなく、なかなか良い特性が得られませんでした。
腰を落ち着けて、きちんと製作することによりシミュレーションに近い特性を得ることが出来ています。

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設計はLtspiceによりシミュレーションを行った後、小基板にBPFを実際に組んで、スペアナで特性を実測します。
さらに、2次試作機に組み込んで効果を確認します。
特性はトリマーコンデンサにて調整し、今まで混入していた海外放送局がウソのように消えてなくなり、アマチュア局のみが浮かび上がりました。
参考として図47にスペアナでの波形(特性)を示します。

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BPFを入れる必要があることと、効果があることが確認できました。
ただし、BPF部の回路規模が若干大きい(つまり、部品点数が多い)ので、回路については今後の検討課題です。

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★フィルタ特性

グラフ4にAF AMP~スピーカ出力までの周波数特性の実測値を示します。

前回のレポートのグラフ3は低域はフラットな特性でしたが、実際には各部にて低域での周波数特性を部品定数にて操作し、結果的にHPFの特性を得ています。
グラフ4の結果から低域でのカットオフ周波数は約350Hzくらいです。
1KHzから上の高域特性はグラフ3に近い特性です。

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★フィルタの評価

実際の受信音でフィルタ効果を確認してみました。
グラフ4のような特性ですが、混信に対して「スパッ」と切れるわけではありません。
そこで、BEFが無いLPFとどのような差が出てくるのか図49のようにカットオフ周波数が可変できるLPF(バタワースの2次)を用意し、効果を比較します。

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混信気味のアマチュア局の場合、カットオフ周波数が6KHz以上の設定では高域のノイズが耳障りで、にぎやかに聞えます。
カットオフ周波数を下げていくと耳障りな高域ノイズは減少します。
1KHzのカットオフ周波数では、明瞭度が下がり、2~3KHzのカットオフ周波数が丁度良いように思われます。
2次試作のLPF+BEFの組み合わせではノイズが少なく、明瞭度も良いです。
混信に対してはLPFのみの組み合わせと比較すると、びっくりするほどの効果はありませんが、全体的に静かに聞えます。

ノイズの少なさはBEFの有無にも関係してくると思われますので、図50のようにノイズレベルの差を比較してみました。

スイッチにてLPFのみとLPF+BEFの構成を切り替えて、ノイズメータにて比較します。
RcはBEF部が挿入ロスがあるので、LPFのみの場合と同じ信号レベルになるようにするための抵抗です。
アンテナ入力は50Ωのダミー抵抗で終端し、AFボリュームの位置をセンターとしてこの時のスピーカ出力のノイズレベルを測定します。
結果、LPF+BEFの構成のほうがノイズレベルが約5dB低いです。
つまり、この構成のほうがSN比が5dB良いことになります。

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実際の受信音でもLPFのみではにぎやかに聞え、少し、うるさい印象です。
LPF+BEFではかなり静かで、疲れない音です。

以上のようにLPF+BEFの組み合わせは今回の特性の場合、混信除去にはそれほどの効果はありませんが、SN比に対する改善効果は大きいです。

2次試作ではAF AMPを追加し、全体のゲインを1次試作より上げています。
これでもMRX-7Dより約4dB低いです。
実際の受信テストではMRX-7Dのほうが、やや、音の出方に余裕があるように感じられます。
感度不足は感じられませんが、強いて表現すると、2次試作機は静かなおとなしい受信音です。

◎2次試作のまとめと今後の展望

2次試作はこれで終了することにします。

①放送局混入の問題 → BPF追加で解決できる
②フィルタの構成 → LPF+BEFの組み合わせのほうがSNに対して有利

①のBPFの追加については、この部分での部品点数に問題があります。
あきらかに、このままBPFを追加すると目標とする基板サイズに収まらない気がします。
基板サイズは前述しましたが、80×80が限界で、これ以上のサイズにするとケースサイズを変更しなければなりません。

ケースはMRX-7Dと同じものを考えています。
80×80の基板サイズに収める工夫が必要で、時間がかかりそうです。

②のフィルタについてはこの構成に決定します。

3次試作はBPFの追加が大きな目的になりますが、少し冷却期間おいて、基板設計の作戦を練ったほうが良いのかもしれません。

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