2016年04月26日

資料・技術情報

FR-50B用VFOの製作 その1【構想編】

◎FR-50Bという受信機

YAESUのFR-50BというHF受信機をご存じでしょうか?
発売開始時期は昭和44年のようで、今から45年ほど前です。

筆者にとっては思い入れのある受信機で、中古で購入しました。
購入価格は忘れましたが、買った帰り道のことは今でも思い出します。

写真1のように送信機FL-50Bと組み合わせることによりトランシーブ操作が出来ます。
FL-50Bはだいぶ大人になってから購入したもので、もちろん中古です。

FL-50Bは電源を入れたことがありません。
どのような音(変調)がするのでしょうか。

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FR-50Bの主な仕様を以下に示します。

(受信周波数)

80m 3.4~4.0MHz 15m 20.9~21.5MHz
40m 6.9~7.5MHz 10m 28.0~29.2MHz
20m 13.9~14.5MHz AUX(JJY) 10.0~10.5MHz

(MODE) AM,SSB,CW

(重量) 約8kg

重量8kgは少し重いです。
筐体の幅は約330mmあり、送信機のFL-50Bを並べると机がいっぱいになるので写真1のように縦に重ねてみました。

FR-50Bは時々電源を入れて、主に7MHz帯を聞いていました。
用いている素子は真空管が主体で、VFO部と第2局部発振がトランジスタを用いた発振回路になっています。
2SC372,2SC373と懐かしい型番です。

ちなみに、雑誌「初歩のラジオ 1973年5月号」の広告ではFR-50Bは定価\29,800-FL-50Bが定価\34,500- となっています。
広告ではFR-50Bを「通信型受信機」と表現していて、当時この言葉に憧れました。
アマチュア無線を始める前は、中学生の時に短波放送を聞きたくて「0-V-2」を作ったことがあるのですが、これは見事に完成できませんでした。

写真2はFR-50Bのフロントパネルです。
今のトランシーバ(または受信機)と違い、周波数表示はアナログです。
下のサブダイアルを回すと上のメインダイアルも連動して動きます。
サブダイアルは1回転で約50KHz(28MHz帯では100KHz)になっていて、今でもこの動きの感触が好きです。

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購入当時、筆者はアマチュア無線の免許を取ったばかりで、50MHzのAMが主な運用バンドでした。

HFはトランシーバなど持っておらず、ミズホのダイレクト・コンバージョン受信機DC-7Dのみでしたので、7MHz帯以外のHFはFR-50Bで初めて聞いたものです。

50MHzと144MHzのSSBはクリコンで28MHz帯に変換し、FR-50Bを親受信機として用いていました。

今、久しぶりにクリコンという文字を書きました。
クリコンについて簡単に説明します。

クリコンとは「クリスタルコンバータ」の略で、図1のように周波数変換の局発が水晶(クリスタル)発振になっている周波数変換装置のことです。

高周波増幅への入力周波数をFr、水晶発振の周波数をFoとすれば、混合出力Fiは

Fi = Fr ± Fo

となり、どちらか希望の出力周波数に同調させます。

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例えば図2のような構成にすれば、50MHz帯は28MHz帯に変換され、FR-50Bの28MHz帯で受信することができます。

Foは固定周波数の22MHzですから

50.0MHz → 28.0MHz
50.1MHz → 28.1MHz
50.2MHz → 28.2MHz
50.5MHz → 28.5MHz

の周波数関係になります。
つまり、FR-50Bの28MHz帯の周波数目盛で50MHz帯の周波数を読むことができます。

当時、50MHz帯はSSB機を所有していなかったので、この構成で良く聞いていました。

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思い出しました。

当時、50MHz帯のAMで自作の無線機で運用されているOMさんがいました。
送信機はもちろん真空管で、受信は確か「高1中2」にクリコンです。
高1中2も懐かしいですね。
クリコンも真空管なのかは不明ですが、送信機と受信機の真空管構成を良く説明されていました。
「変調は6BQ5のプッシュプル」の言葉を覚えています。
周波数変換はたぶん、7MHz帯なのかな

FR-50Bが現在でも実用になるかというと筆者には分かりません。
ただし、FR-50Bで7MHz帯を聞くと、にぎやかに聞え、これは筆者の好みです。

◎内部の様子

写真3にシャーシ上面の様子を示します。

これでも写真撮影用に掃除したのですが、あまりやりすぎると部品破損が心配になってきました。
真空管を雑巾で拭いたら型番の文字が消えそうです。
ほどほどにしておいたほうがよさそうです。

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VFOはプリント基板で組まれており、部品番号などのシルク文字はありません。
内蔵VFOと固定チャンネルの選択スイッチ(CH SELECT)がボロボロです。

この選択スイッチはVFOのポジションで内蔵VFOに接続され、固定チャンネルのポジションでは内蔵VFOが切り離されると思いこんでいました。
ところが、このスイッチはどこにも配線されておらず、常に内蔵VFOが動くことになっています。
スイッチに、はんだの跡がありますので前の所有者が改造したのかもしれません。

写真4はシャーシ内部の様子で意外ときれいです。
以前に電源を入れた時に掃除をしたのかもしれません。
いかにも「通信型受信機」のように感じます。

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◎電源を入れる

久しぶりに電源を入れてみます。

電圧チェックを兼ねながら、アナログテスタを電源部に接続し、電源を入れます。

バンド切り替えに接触不良があるらしく、スイッチを少しこじると受信できますが、パイロットランプが点灯しません。

7MHz帯は相変わらず、にぎやかですね。

筆者のアンテナは地上高5m、長さ15mほどの簡易的なロングワイヤーですが、良く入ります。

電源OFFで電源部の電圧はすぐに下がります。
デジタルテスタの場合、直観的に電圧の有無が分かりにくいのですが、アナログテスタは針の反応ですぐに分かります。
普段、アナログテスタは使わないのですが、こういう場合便利です。
電圧が残っていないことが確認できましたので、各部品に異常がないか目視チェックします。
特に異常はないようです。

ずいぶん昔に真空管アンプに凝っていた時期があり、自作を楽しんでいたのですが、ケミコンの破裂に数日間気が付かないことがありました。
最初の電源ONでは持ちこたえて、目視では異常が分からず、その後に破裂したと思います。
製作後、配線チェックをしないですぐに電源を入れる人がいます。
筆者も最近はせっかちになり、すぐに電源ONする人です。
今回は高圧を扱う装置ですから、ここは慎重にしなくてはなりません。

◎VFOが少し不安定

時々、感度が変化することに気づきました。
もしやと思い、VFO出力をオシロスコープで観測してみます。

回路図で確認しながら、混合部真空管のカソードを観測すると出力は約1Vp-p位で、時々、レベルが変化します。

感度変化はこれが原因なんだろうなと思いながら、ついでに周波数カウンターで周波数を観測してみます。
周波数が動いているのが良くわかります。

それにしてもオシロスコープでの観測には神経を使います。
普段、数Vからせいぜい24V程度の電源を用いたセットをいじっていますので、感電する心配はありません。
ところが真空管を用いたセットでは高圧がかかる部分がありますので、慎重に行なう必要があります。
オシロスコープを接続する付近に高圧がかかるところがないか、いちいち確認しながらの作業です。

◎DDSによるVFO製作を思いつく

★AUXの穴を利用する

VFOの周波数変動については仕方ないことと思いますが、出力変動については少し困ったものです。

バンド切り替えスイッチの接触不良なのか発振部単体の問題なのか切り分けに時間がかかりそうです。

スイッチの代替え部品がありません。

VFO発振部は基板で配線されているのですが、かなり汚く、部品劣化もあるのかもしれません。
今更、VFO部の修理をしようとしても時間もかかるでしょうし、技術もありません。

背面パネルを眺めると、VFO出力端子の横に穴が空いており、AUXの文字(刻印)があります。
穴のサイズからRCAピンジャックが適合しそうです。

この穴を見たとたん、外部にてVFOを製作することを思いつきました。
これなら、外観を損なわず、外部VFOを接続することができます。

後で気が付いたのですが、FR-50BのVFO OUT端子も利用できそうです。
ただし、この端子を利用するとFR-50BからのVFO OUTが無くなるので、やはり、AUXの穴を利用することとします。

★VFOの方式

VFOはアナログ式、デジタル式と色々考えられます。
アナログVFOは技術と時間が必要です。
アナログVFOはあきらめます。

そこで、PLLまたはDDSの選択となり、これにより周波数表示もデジタルで簡単にできます。
手持ち部品を探すと、ちょうど良さそうなDDS-ICがいくつか見つかり、適当な水晶発振器も出てきましたので、DDSを採用することにします。

今回はDDSを受信機のVFOとして用いるわけですから、制御も簡単になりそうです。

DDSにより、VFOの周波数変動の件も大幅に改善されます。

FR-50Bが販売された当時はアナログVFOが主流だったと思います。
最近のメーカー製トランシーバーはどのような方式か分かりませんが、雑誌の広告を見ると難しい単語が並んでいます。
「通信型」という文字はどこにもありません。

昔の「通信型受信機FR-50B」にDDSのVFOを接続することは、少し邪道のような気がしなくもありません。

◎構想

★受信バンド

図3にFR-50Bの周波数変換部のブロックと周波数関係を示します。

周波数変換は2か所で、第1局発がVFO、第2局発は水晶発振によるダブルコンバージョンです。
ダブルコンバージョン。。。。良い響きです。

VFOは各バンドにおいて常に5.1739MHzとなるように発振する関係で、7MHz帯の場合約12MHzになります。
他のバンド28MHz帯では約23MHzになり、この場合用いるDDS-ICによっては少し無理な気がします。
そこで今回は7MHz帯専用としてみます。

ちなみに3.5MHz帯のVFO発振周波数は約9MHzになり、この周波数であれば問題はないのですが、バンド切り替え等の問題があり、面倒なので7MHz専用とします。
他のバンドを聞きたい場合、内蔵VFOと固定チャンネル選択スイッチを利用すれば、内部と外部のVFOを切り替えることができます。

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★操作イメージ

図4に操作パネルのイメージを示します。

表示はLCDとし、最少単位10Hzです。
周波数設定はロータリーエンコーダですが、チューニングステップは3ポジションのトグルスイッチにて10Hz,100Hz,1KHzの選択です。

7MHz帯では海外日本語放送もありますので、10KHzステップがあると便利と思います。
4ポジションで操作性の良いスイッチがあれば良いのですが、とりあえず、3つの選択で進めることにします。

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周波数表示の分解能は10Hzですが、実際には周波数誤差が予想されます。
この誤差は邪魔になり、10Hz桁は消したほうがすっきりするかもしれません。
とりあえず、デバック用として残すことにし、完成した後で10Hz桁の表示有無を判断しようと思います。

★ブロック

操作パネルのイメージができましたので、それにそったブロック図を図5に示します。

単純な仕様としましたので、簡単なブロック図となりました。

VFO出力はDDS出力になり、出力レベルが少し気になります。
DDS-ICとマイコンの選択は必要な信号線の本数を出してから決めることにします。
IC以外の必要な部品も見えてきました。

どのようなLCD、エンコーダを用いるか、考えることが楽しみになってきました。

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それと、図6のように収めるケースにチルトスタンドがあれば操作性が良いかもしれません。

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ケースもちょっと凝ってみたくなります。

ものづくりは構想段階が一番面白いです。

FR-50B用VFOの製作 その2【設計編】に続きます。

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