2014年10月01日

デバイス

J-FETによるソース接地増幅回路の設計例

J-FETによるソース接地増幅回路の設計例

図9の回路で設計してみます。
C2は交流的にソースをGNDに接続するためのコンデンサです。これが無いと増幅度が小さくなります。

 

★ドレイン電流IDの設定

BLランクのIDSSは図10のようにばらついています。

ここではIDSSのほぼセンター値であるIDSS = 9.0mAの特性上で設計してみます。

IDは0より大きく9mAの間であればどのポイントでもよさそうですが、IDの値が低いとgmの値が小さく、
また、9mA近辺では入力信号の大きさにより、VGSが正の領域になる恐れがありこれはNGです。
(入力信号が小さければIDの値が大きいポイントが良いです)

ここでは、

ID = 6mA となるようにしてみます。

これは入力信号が無い(無信号)状態で6mAのドレイン電流が流れていることになります。

 

★VGSの値

任意のIDにおけるVGSはデータシートのグラフから読み取ることも可能ですが、 計算式により求めたほうが簡単です。IDSS = 9mA ID = 6mA VGS(OFF) = -0.57V の条件から計算により求めると、 

VGS ≒ -0.1V

この電圧(-0.1V)となるようにすれば無信号時のドレイン電流が6mAになります。

 
★RDとRSの設定

RSの値は大きいほどIDSSのばらつきに対して有利になりますが、あまり大きいと
この抵抗による電圧降下分は交流信号に対して使えないことになります。 これを考慮して

RS = 560Ω にしてみます。

RDは大きいほど増幅度があがります。ここではRSと同じ560Ωにしました。
この時の直流電位関係を図11に示します。

 

★R1、R2の算出


 

R2以外はすでに Vcc = 10V VGS = -0.1V ID = 6mA RS = 560Ω  です。

R2はいろいろな値が考えられ(選択)ます。あまり小さい値ですと、
回路の入力インピーダンスが低くなります。ここでは、

R2 = 100KΩ とすると、
R1 = 100K [ { 10 / (-0.1 + 6mA・560Ω) } - 1 ] ≒206.7KΩ となり、

E24系列の中から
R1 = 200KΩ

 
★gmの算出

任意のVGSにおけるgmは計算式で求めることができ、IDSS = 9mA VGS(OFF) = -0.57V

VGS = -0.1V の条件では、

gm ≒ 26mS

 
★増幅度の算出

③式から


注意:マイナス符号は無視しています

 

★入力インピーダンス

FETのゲートは高抵抗なのでこの部分は図12のようにオープンと見なせます。
結局、回路の入力インピーダンスはR1とR2の並列合成になり、 R1 = 200K、R2 =
100Kですから、約66KΩになります。

 

定数決定回路を図13に示します。結局、この回路で、 

電圧増幅度Av +22.78dB
入力インピーダンス 約66KΩ

入力インピーダンスはトランジスタで構成した場合、高くする(例えば数10KΩ以上)には工夫が必要です。
しかし、FETで構成すると入力インピーダンスは抵抗R1、R2で決定されますので、 その設定(設計)は容易です。

回路の入力インピーダンスが高いということは、信号源インピーダンスが高い信号を増幅したい場合に有利です。
例えば、図14のように信号源インピーダンスが10KΩで、この信号源からの出力電圧が1Vとします。

図14 a ) の増幅回路の入力インピーダンスが5KΩでは実際に入力される信号電圧は
0.333Vとなり、ロスが発生します。

これに対し、図14 b ) のように入力インピーダンスが66KΩの場合、実際に入力される
信号電圧は0.868Vとなり、ロスが少なくなり効率良く増幅することが出来ます。

このように信号源インピーダンスが高い場合、増幅回路としては 入力インピーダンスが高いことが望まれます。

 

図13の例では入力インピーダンスが66KΩになりましたが、図15のように
抵抗R3を追加することにより、さらに入力インピーダンスを高くすることが出来ます。

R3の値が何Ωであろうが、ゲートには電流が流れませんのでバイアス電圧は
R1,R2で決まります。したがって、バイアスポイントを変えないで、
R3により入力インピーダンスを決定することが出来ます。

 

以上をまとめたものを図17に示します。

 

 

 

オーディオ帯域での主な増幅用J-FET

表1 主なJ-FET

型番IDSSYfsYfs条件コンプリ
2SK30ATMGR
2.6mA~6.5mA 4mS 4mA
2SK117Y
1.2mA~3.0mA
2SK117-GR(F) 2.6Am~6.5mA 20mS 6mA
2SK170GR(F)
2.6Am~6.5mA 30mS 6mA 2SJ74
2SK246-GR
2.6Am~6.5mA 4mS 5mA 2SJ103
2SK330-GR(F)
2.6Am~6.5mA 4mS 5mA 2SJ105
2SK362-GR(F)
2.6Am~6.5mA 20mS 6mA
2SK363-BL
8mA~16mA 50mS 9mA
2SJ103-GR(F)
2.6Am~6.5mA 4mS 5mA 2SK246
2SJ105-GR(F)
2.6Am~6.5mA 4mS 5mA 2SK330

Yfsの条件はIDSSの値

それぞれ特徴がありますが、いままでの説明では相互コンダクタンスgmを用いて
設計してきました。ところがデータシートを見ますと、gmの文字がありません。
そこで、gmとYfsの関係を説明します。

 

★順方向伝達アドミタンス Yfsとは

 

アドミタンスとはインピーダンスの逆数のことで、インピーダンスをZ、アドミタンスをYとすればY = 1 / Z の関係があります。

また、インピーダンスは実数Rと虚数Xの成分があり、
Z = R + jX となり、

アドミタンスでは
Y = G – jB
G : コンダクタンス
B : サセプタンス

Yfsは等価回路のYパラメータの1つで、意味はソース接地の場合の「順方向アドミタンス」

VGSを変化させたときのドレイン電流の変化の割合を表わしています。
式で表現すると右のとおりで、実際にはサセプタンス分もあるのですが、
低周波の場合、この成分は小さいのでこの設計では無視しています。 したがって、低周波の場合は

Yfs ≒ G

として、相互コンダクタンスgmを意味しています。 また、Yfsの値が大きいほど増幅度が大きくなります。
なお、表1におけるYfsは各データシートのグラフを読み取ったもので、読取ミスについてはご容赦願います。

 

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