2015年09月29日

デバイス

7MHz AM真空管式送信機の実験 第3回 製作編

◎最終回路

結局、図18のように6AR5にしました。変調器にはTPA1517を用いたものでT1にて変調をかけます。
M1にてプレート電流を監視し、M2はアンテナ出力監視用です。

◎部品表

0.0047μFのセラコンは耐圧500Vです。
R10は10kΩ、1Wが望ましいのですが、手持ちがなかったので、47kΩ、1/4Wを4パラ(並列)接続しています。
電流計M1とつまみはFT-200Sからの取り外し品です。
ラジケータM2は200μAにこだわる理由はなく、手持ち部品の活用です。

 

表6 終段増幅回路と周辺回路部品表

部品番号品名型番メーカー数量
C14~C19 セラコン 0.0047μF/500V 6
C20 セラコン 1pF/50V 1
C21 セラコン 0.01μF/50V 1
D1 ゲルマダイオード 1N60 1
J2 絶縁ターミナル 赤 TM505アカ MSK 1
J3 絶縁ターミナル 黒 TM505クロ MSK 1
J4,J5 DCジャック MJ14ROHS マル信 2
J6 BNCコネクタ(レセプタクル) 1
J7 M型コネクタ(レセプタクル) 1
L1,L2 プラグインボビン 1
M1 電流計 FT-200Sからの取り外し品 1
M2 ラジケータ 200μA 1
R9 カーボン抵抗 1/4W 47kΩ 1
R10 カーボン抵抗 1/4W 47kΩ 4
R11 カーボン抵抗 1/4W 10Ω 1
R12 カーボン抵抗 1/4W 10kΩ 1
T1 トランス 8Ω:7kΩ 真空管用 1
V1 真空管 6AR5 1
VC1 タイトバリコン 100pF/500V 1
VR2 多回転トリマ100Ω LTP3296W-1-101 Linkman 1
VR3 半固定抵抗 50kΩ GF063P1B503 東京コス 1
XV1 真空管ソケット MT用7ピン 1
XL,XL2 プラグインボビン用ソケット 1
アルミシャーシ S8 LEAD 1
NP型アルミパネル NP-11 タカチ 1
つまみ (VC1用) FT-200Sからの取り外し品 1
立ラグ、金属スペーサ、配線材等 適量

 

◎ケース加工

図19のようにアルミシャーシとアルミパネルの組み合わせで、パネル部に電流計など、シャーシのリヤにコネクタ類を配置します。
パネルはL型です。
市販のL型を利用しても良いのですが、板を希望のサイズにカットしてL型に曲げています。

写真18は加工済の様子です。
パネルの角穴加工が面倒なので、パネルから作業を始めました。
角穴はシャーシパンチにて大きな丸穴をあけてからハンドニブラで加工しました。仕上げはヤスリです。
ラインが少し曲がっていますね。性格が出ています。

シャーシのほうは丸穴だけです。
真空管ソケット、M型コネクタなどもシャーシパンチです。
写真19は用いた主な工具です。
いずれも40年くらい使用しているもので、リーマのハンドルが曲がっています。
新しいものを買ったほうがよさそうです。

 

◎部品取付

写真20は部品取付後のシャーシ内部の様子です。
高圧(250V)がかかる部分はシャーシ上に出さない設計です。
昔、変調トランスをシャーシ上に配置した送信機を製作したことがあります。
アンテナ端子をさわろうとした時に変調トランスの端子に手が触れてしまい感電したことがあります。
それ以来、端子が露出したトランスを見ると恐怖感があり、写真20のように変調トランスもシャーシ内部の配置です。

ラグ板取付位置で少し迷いました。
シャーシ加工時に取り付け穴を少し多めにあけておいて、結局、写真20の位置に取り付けています。
普段、プリント基板またはユニバーサル基板を用いた製作方法なので勝手が違うものです。

タイトバリコンはシャフトが長いのでこのまま取り付けると、つまみを取り付けた場合すきまが大きくなり、見た目が良くありません。
シャフトを短くカットしても良いのですが、図20のように中空の金属スペーサを利用して高さ調整しています。

★電流計の調整

プレート電流を監視する電流計はFT-200Sから取り外したもので、図21のように0.5mA流れた時にフルスケールになりました。
これをフルスケール50mAの電流計にするためには分流器を用います。
そのために、電流計の内部抵抗Rmを確認します。方法は0.5mA流した時の電流計両端電圧を測定し、オームの法則により、R = V / I で計算します。
両端電圧は0.248Vでしたので、内部抵抗Rmは496Ωです

分流器Rsは測定範囲を拡大するためのものです。図22のRm、Imは電流計の内部抵抗および電流です。
Rsを並列に接続することにより、おおもとの電流IoはImとIsに分かれ、IoとImの比をnとした場合のRsとRmの関係を①式に示します。

例えば図23のように50mA流れた時、Imに0.5mA、Isに49.5mA流れれば、フルスケール0.5mAの電流計で50mAを測定することができます。
Rmは496Ω、nは100ですから、①式でRsを計算すると5.01Ωです。IoとImは比例関係になりますから、50mAで調整しておけば、20mA、30mAなどはそのまま電流計の読みになります。

分流器Rsの値は5.01Ωと計算できましたが、実際には図24のように半固定抵抗を用いて調整します。
今回は微調整しやすいように多回転(25回転)の半固定抵抗を用いています。

写真22はメータ(電流計)に分流器を取り付けた様子です。
この状態で写真23のようなDC電流発生器から50mAを印加し、フルスケールに調整します。

DC電流発生器がない場合、図25の方法でも調整できます。
回路に50mA流れれば良いので、DC電源から電流を流します。
抵抗Rtは回路保護を兼ねた電流設定用です。
メータの内部抵抗と分流器を含めた合成抵抗は約5Ωくらいですから、この部分を無視すれば回路に流れる電流は電源とRtで決まります。
Rtを200Ωとすれば10Vで50mA流れることになり、この値をテスタで監視(測定)して50mAになるように電源電圧を調整します。
この状態でメータがフルスケールになるように半固定抵抗を調整します。

この例では電源電圧を10VとしましたのでRtは200Ωになりますが、電源を2.5VとすればRtは50Ωです。
しかし、この組み合わせでは半固定抵抗を調整すると回路電流が動いてしまいます。
つまり、図25の方法の場合、回路に流れる電流はRtで支配的になるように大きな値にします。

 

◎配線

写真24,25のように配線数が少ないのですっきりしています。
はんだ付けには自信があるのですが、高圧がかかる部分には気を使います。
変調器基板はシャーシ上なのでマイク接続用コネクタへの配線はシールド線を用いました。

電流計への配線はシャーシ穴に線材を通しますがこの部分は高圧がかかるので図26のようにブッシュを用い、線材の耐圧にも気を付けます。

久しぶりに真空管を用いたセットを組み上げました。
ケース加工から始まり、部品取付、配線と行ったわけですが、達成感があります。シャーシ加工は少しつらいところがあったのですが部品取付は楽しめました。

 

◎電源を入れる

写真26、27に組み立て後の外観を示します。最初の実験機より少しマシなかっこうになりました。
昔風な作りで電流計が「いかにも送信機」という印象を与えています。
真空管が1本なのは少し寂しいのですが、ユニバーサル基板との組み合わせが不思議に感じられます。

配線ミスがないことを何度も確認してから電源を入れてみます。
まずはヒーター電源からです。
電源のCC設定が小さかったので電流リミットがかかってしまい「びっくり」です。
6AR5は冷えている状態で2Aくらい、温まると0.6Aくらいになります。
今度は250V電源の出力をONします。この瞬間は緊張しますね。

バリコンを回すと電流がディップするのが分かり、タンク回路はうまく動作しているようです。
各部の電圧をすばやくチェックするとR10の消費電流が定格オーバーしていることが分かりました。
この部分は6BA6を用いた時に20kΩの1/4Wを並列接続していたのですが、6AR5では定格オーバーします。
10kΩの1W以上が望ましいのですが、手持ち部品がありません。
仕方なく47kΩの1/4Wを4パラとしました。

アンテナ出力はオシロスコープの波形から見ると約3Wです。
この件については最初のレポートで少し触れました。
写真27のようにL1とL2の距離を小さくすれば良いのですが、ショート防止をどうするか良い方法が浮かびません。
とりあえず、タンク回路はこれでOKとします。
写真28は電流計の様子です。この状態でプレート電流24mAと読めます。

写真29は正弦波、1KHzで変調をかけた波形です。
マイク・コンプレッサを用いているので、信号レベルによらず一定になります。
1KHzの発振器出力レベルを調整しても変調度が一定なので「何で?」と一瞬考えてしまいます。
マイク・コンプレッサも自分で作ったものなのですが、その動作をすっかり忘れています。

アンテナ出力監視用のM2周辺回路はカットアンドトライで定数を決めています。
ブレッドボードに組んだもので定数決めを行い、シャーシ内部で配線します。

図27はバリコンを回した時のメーターの動きです。
非同調時はアンテナ出力が小さく、プレート電流は大ききい状態です。
バリコンを回して同調を取るとアンテナ出力が大きくなりプレート電流が最少になります。
2つのメーター状態を同時に見ることができるので、これは面白いです。

 

◎評価

受信機にTRIOのJR-500Sを用い、ICOMのIC-726Sと比較してみました。図28は主な実験機材です。
コンデンサマイクはマルチメディア用で、これに自作のマイク・コンプレッサを通して実験機に入力します。
IC-726SのマイクはHM-36を用いました。

以前に製作、レポートした半導体式送信機TX-2014Aは低域が少し出すぎている印象があったのですが、今回の試作機ではそれはありません。
全体的に試作機のほうが線が太い印象で、マイク・コンプレッサの効果と思われます。
昔聞いた真空管式送信機の印象が強すぎるのか、特にこれが真空管の音ということではありません。

一言で言えば「普通の音」です。終段増幅部のみが真空管で、それ以外は発振部がファンクションジェネレータ、変調部は半導体です。
その構成の影響なのかは分かりません。ひずみ感もなく、まともな音は良いのですが、少し物足りないところがあります。
受信機によっても音が変わります。IC-726Sで実験機の音を聞いてみると、やはり普通の音です。

 

◎まとめ

終段増幅部のみを真空管にした送信機の製作、実験を行いました。
製作に不慣れなところがありました。

立ラグを用いた部品配置、配線は勝手が違い難しいものです。
以前に製作した送信機TX-2014Aのように手軽に製作できるものではありませんが、真空管セットの製作は面白いものです。

音に関しては少し期待外れです。
評価のところで少し触れましたが、普通に良い音で、特にこれが悪いというのがありません。
しかし、何かが足りない気がします。
昔聞いたOMさん自作送信機の深いAM変調音の印象が強すぎるのかもしれません。

変調器は半導体のアンプ構成でしたが、この部分も真空管式にすれば音が変わるかもしれません。
新規に製作となると、シャーシ加工を考えた場合かなり面倒です。
変調器基板の下にはスペースがあり、これを利用すれば真空管が2本実装できそうです。
最初からこのことを想定してシャーシ加工していれば良かったと思います。
計画性が無いですね。
とりあえず最初に実験したバラックセットを利用し、実験するのが先かもしれません。
チャレンジする価値はありそうです。

 

7MHz AM真空管式送信機の実験 第1回目 終段増幅器編 はこちら
7MHz AM真空管式送信機の実験 第2回目 変調器編 はこちら

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