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LV-2.0 シリーズ音質改善 その3

今回で3回目となります音質改善ですが、今まで実際に信号が通過する箇所に拘って説明して来ました。
カップリングコンデンサー、オペアンプ、接続ワイヤーなどを紹介して来ましたが、今回はいよいよアンプの部分になります。
と言っても、アンプの入力部分のカップリングコンデンサーは、第一回で紹介しましたので、いよいよアンプ自体について改善して行きたいと思います。
LV-2.0のアンプは、IR4301というチップを採用していますが、これはゲートドライバーとパワーMOSFETがひとつにパッケージされたものですので、この構成を変更するのは、大がかりになってしまいます。
そこで、アンプの出力部分に注目して音質改善を試みてみたいと思います。

 

IR4301の出力

では、LV-2.0のパワーアンプの回路図を見てみましょう。

 

IR4301の出力はダイレクトにOUTに繋がっていますので、その後ろにコイルとコンデンサーが入っている事がわかります。
その先はスピーカー端子ですので、アンプの出力はこのL1というコイルを通って出力されることになります。
みなさん、もうお気づきだと思いますが、今まで音の通り道にあるデバイスが一番音に影響を与えるのですから、まさにこのコイルは音質に重要な部品となるわけです。
いったい何故このようなコイルが必要なんでしょうか?

 

真空管アンプ時代には、スピーカーに合わせるために出力トランスが着いていました。この出力トランス(まさにコイル)で音質がずいぶん左右されます。
大きいし価格も高いし音質にも影響するというので、OTL(出力トランス無し)方式というのも出てきたくらいです。
その後、トランジスタアンプが主流になり、トランスがいらなくなった事で、アンプは飛躍的に小型化、高音質化されました。
ところが、最新でデジタルアンプでは出力にコイルを着けなければならなくなってしまいました。

 

回路図を良く見ると、コイルとコンデンサーの形になっていますね。
これはフィルターの役目をしているのです。
ご存知のように、デジタルアンプは高い周波数でスイッチング動作を行っています。IR4301の場合は400KHz程度でしょうか。
デジタルアンプの出力はこのスイッチングのパルスの幅を変えてスピーカー出力を作り出しています。
PWM(パルスウィズスモジュレーション)

 

従って、フィルターをつけない状態ですと、スピーカーケーブルの中はこのスイッチング周波数でバタバタと振られることになります。
可聴周波数を遥かに超えた周波数ですので、フィルター無しで繋げても音を聴く分には問題はありません。
しかし、例えば40W8Ωの場合は、±18Vが2Aでフルスイングしている事になります。これがスピーカーケーブルの中で起こっているわけですから、大きなノイズ発生元となり、アンプ自身や他の機器に影響を与えることになります。
従って、デジタルアンプでは、出力に高周波数をCUTするためのLPF(ローパスフィルター)が必要になってきます。
それでは、LV-2.0の場合のフィルター特性を見てみましょう。C11は付いていないので20mHと0.47μFの2次フィルターになります。

黒線が4Ω赤線が8Ωの時の特性です。 LCフィルターの場合、負荷(スピーカーインピーダンス)によって周波数特性が変わってきます。
400KHzで-30dBですから、1/30程度に押さえ込まれることがわかります。
このあたりの詳しい内容は、デジタルアンプの周波数特性で記述していますので、そちらをご一読ください。

 

コイルの変更

さて、それでは、このコイルを変更して音質の違いを確認してみましょう。

すでにはずしてしまっていますが、これがオリジナルで使用されているコイルです。
サガミエレク DLM-1623

 

このコイルは、10μHが2段になっているタイプで、LV-2.0のように2次と4次に切り替えて使用する方法もありますが、BTL(バランス出力)構成のデジタルアンプを1チャンネルに1個で対応できるように開発されたものです。
コイルをはずすには、4箇所のはんだを順番にハンダごてを当てて少しずつ浮かせてはずしてください。

 

今回は、同じサガミエレクのこのコイルを選んでみました。
サガミエレク 7G17A

サガミエレク 7G17B
これらはインダクタンスが22μHですので、DLM1623シリーズの20μHより少し大きいですが、周波数特性などにほとんど影響はありません。

黒線が20μH 青線が22μHです。
また、電流特性なども全く問題ありませんし、DLM1623との違いは、完全に密閉(磁気シールド)されていて、磁束漏れが少なく他からの影響も受けにくいものです。
それから、直流抵抗が少ない(特に17Bはコイルの巻き線が丸ではなく平角線を使用しています。)ので損失が少なく済みます。

 

端子が合わないので、小細工します。

 

 

 

★上の基板の写真の黄色の丸印の部分がコイルの両端になります。

 

★このようにS(巻き始め)F(巻き終わり)がありますので、ふたつのチャンネルの向きを合わせましょう。

 

基板に密着できないので、すき間にテープを張ってこのように取り付けました。

【追記】両面基板なので、うまくパターンをカットして穴あけすれば、きちんと取り付ける事ができます。

・ 電子工作に必要な工具の種類と使い方 【穴あけ編】

 

試聴

では、アンプに組み込んで音を確認しましょう。

 

これで、アンプの入力から、出力までひととおりの音の経路の部品を変更する事による音の違いを確認してきました。
今回はフィルターのコイルだけでしたが、コンデンサー0.47μF/100Vも他の部品に変更したり、それ以外にも様々な方法があると思います。
皆さんもいろいろとチャレンジしてみてください。これまでの説明が少しでもお役に立てれば幸いです。

 

 

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