2015年11月11日

教育分野

アナログ的測定器 第1回目

◎はじめに

測定器は電子機器の設計確認、動作確認などにかかせない機器です。
テスタ、オシロスコープなどは身近な測定器ですが、デジタル化が主流になっています。
例えばアナログテスタとデジタルテスタ(マルチメータ)は電圧、電流、抵抗などの電気的基本を測り、アナログオシロスコープとデジタルオシロスコープは波形観測などに用いられますが、動作原理は異なります。
最近、アナログオシロスコープまたは表示にアナログメータを用いた機器を見かける機会が少なくなり、実際に用いたことがない方も多いと思います。
そこで、アナログ的な各種測定器を紹介したいと思います。
なお、説明に用いる測定器はことわりのないかぎり販売終了品です。

◎アナログテスタ

★筆者所有品

筆者がアナログテスタを初めて購入したのは40数年前です。
HIOKIのAF-105というもので、初心者が用いるには少し高級なものだったと思います。
数年使っていたのですが、DC電流ファンクションで誤ってDC電圧を測ってしまい、内部の抵抗を破損してしまいました。
当時の雑誌広告を見るとHIOKIではAF-105以外ではL-33TXなどの型番が掲載されています。
ボディの色によって「ロミオ」、「ジュリエット」、「パリス」などの愛称が付いています。
OL-64TXなどは「ナルシス」で、型番は忘れましたが、「ナポレオン」という愛称のものもあったと思います。
メーカーによっては型番が数字の羅列のみであったりします。
いつも使っている機種であれば数字でも覚えるものですが、たまに使う機種の型番はいまだに覚えられません。

アナログテスタはあらためて紹介するまでもありませんが、写真1に筆者所有のアナログテスタを示します。
古い順に左から並べてみました。

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一番左のHIOKI P-70はAF-105の次に購入したもので、昭和40年代後半と思います。
AF-105をすでに所有していたのですが、小型であることと、ファンクション切替がテストリード差込式であることに興味をおぼえて購入したのかもしれません。
写真2はP-70の操作部で、DC電圧、DC電流など個別の端子(穴)がレンジ毎に並んでいます。
例えば、DC12Vを測りたい場合、テストリードの黒を「-DC」に挿入し、赤のテストリードはDC25Vに挿入します。
このような方式の現物を見たのはP-70だけなのですが、当時発行のテスタ入門書を見ると、他メーカーでも販売されていたようです。
P-70の販売開始時期は分かりません。
1970年発行の雑誌を見ると広告が掲載されています。

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左から2番目のHIOKI 3020は組立キットです。
記憶では1990年前後に購入したもので、組み立てて使おうという目的ではなかったと思います。
たぶん、定年になった時に真空管式ラジオを組み立てた時の調整、確認用に用いようというつもりで購入したと思います。
ちなみに、筆者は定年までにはまだかなりの年数があるのですが、数年前にこのテスタを組み立ててしまいました。
大事に保管して、数年毎に中身をチェックしていたのですが、プリント基板銅箔の変色に気づき、定年までにはもたないと思い、とうとう組み立ててしまいました。
使ってみると、メーター目盛がすっきりしているので数値が読みやすいです。
DCV、ACV、DCmA、Ωの最低限の機能しかありませんので、余計な目盛がありません。
(写真3)大きさは小さく見えますが、厚みがあります。
SANWAのZX-2000は大型テスタの分類ですが、厚みはこれと同じくらいあり、SANWAのSH-88TRに対して2倍近くあります。

測定器とは関係ありませんが、写真4が定年後に組み立て予定の真空管式ラジオのキットです。
ずいぶん昔に購入したもので、未組み立て品です。
説明書を見ると、ラジオではなくラヂオと書いてあります。
(ヂはDIで出るんですね)久しぶりに箱を開けました。
抵抗コンデンサ類のリード表面は少しくすんで見えますが、パネルは非常にきれいです。

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コレクション自慢をしてしまいました。
アナログテスタの話に戻ります。
写真5はSANWAのZX-2000です。
1980年代後半に購入したもので少し大きめサイズです。
DCVの入力抵抗は50kΩ/Vと高く、この数値はAF-105と同じで、トランジスタのhFE、FETのIDSSなども測れます。

写真6は筆者にとって最新式のアナログテスタ、SANWAのSH-88TRです。
DCVの測定時にメータ位置をセンターに調整することができて、プラス極性の入力時は針が右に振れ、マイナスの場合は左に振れます。
つまり、プラスマイナスの測定ができます。
例えば、回路出力のオフセット調整などに使うことができ、この利用目的で購入しました。
ちなみに、SH-88TRは現行機種です。

▽マルツオンライン アナログマルチテスター【SH-88TR】
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/4335/

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★使用上の注意点

アナログテスタでDCV(直流電圧)などの電圧測定を行う場合、「内部抵抗」の大きに注意する必要があります。
これについては「資料・技術情報」の「アナログテスタの動作原理」を参照願います。
デジタルテスタにない特徴(良さ)を理解し、各測定に活用してください。

▽ マルツオンラインの技術情報 アナログテスタの動作原理
http://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/189.html

◎携帯用指示計器

これは販売されていますので、見かけた方も多いと思います。
写真7は中古で購入しました。1Aを超えるような大き目の電流をモニターする目的で使用しています。
サイズは約17cm四方で、メータが大きく目盛もすっきりしているので数値が読みやすいです。
線材を利用して各端子に接続します。

目盛板に1963の文字が見えます。1963年製造のものでしょうか。

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◎電子電圧計(DC系)

★原理

アナログテスタの内部構成は原理的にDC電流計と抵抗器です。
つまり、入力されたDC電圧などを増幅(信号処理)しているわけではありません。
このような方式とは別に電子的に信号処理を行ってメータ表示をさせるものがあります。
一般的に電子電圧計と呼ばれる測定器で、今回はDCV、DCIなどの直流信号用途について紹介します。

図1に電子電圧、電流計の原理図を示します。
電圧入力時は抵抗による分圧器で適当な大きさとなるようにレンジ切り替えを行ってから信号を増幅します。
直流信号を増幅する場合、オフセット電圧およびドリフトが問題になりますが、実際にはアンプ部にはこれらの影響が少ないゼロ・ドリフト・アンプ(チョッパ・アンプ)で構成されているようです。

電流入力時には測定しようとする電流を低抵抗に流します。
抵抗の両端には電圧が現れますので、これを必要な大きさに増幅して電圧に変換します。
抵抗値と増幅度はあらかじめ分かっていますので、電圧値により電流値が分かることになります。
図1の構成のみでは精度等不備な点があるかもしれませんが、電子電圧計、電流計はこのように入力された信号を電子的に処理して測定するものとご理解ください。

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★製品例

写真8に製品例を示します。かなり古い機種になりますが、すべて半導体式です。

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写真9に115Aの操作部を示します。
この機種はDCの微小の電圧と電流を測定するミリボルトアンメータです。
電圧の測定レンジは1.5mV~500V、電流は0.15μ~50mAで、中央にあるスイッチで切り替えます。
最大の特徴はセンターゼロのメータになっていて、これによりDCの極性切り替えを行わないで数値を読むことが出来ます。
写真10のようにメータのセンターがゼロの目盛になっており、左右対称に数値が振ってあります。
極性がプレスであれば針が右に振れ、マイナスの場合は左に振れて、その時の数値を読みます。
測定機能が電圧と電流だけですから、メータ目盛がシンプルで読みやすいです。
電圧測定時は写真11の専用プローブを用い、この場合の入力抵抗は11MΩとなり、低電圧、高インピーダンス回路でも精度良く測定できます。

この機種は現在も使用しています。
頻繁に用いるわけではないのですが、作業台の一番上の測定器棚隅に置いてあります。
センターゼロメータが特長ですからオフセット電圧の調整用途に便利なのですが、微小電流の測定が主な用途になっています。
電流測定はデジタルテスタでもできるのですが、場合によっては回路に影響を与えることがあり、どれが正しいのか比較用としてこの115Aを用いています。

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ちなみに、この115Aは校正に出していません。説明書に調整方法が記載されています。
確認用途なのでDC電圧、電流標準発生器を用いて自分自身で調整をしています。

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写真12は116Aのメータ部です。
116AもDC電圧および微小電流を測定するものです。
電圧は15mV~500V、電流は1.5μA~50mAの10レンジです。
メーカーの品名では「ボルトアンメータ」となっています。
面白いのは115Aではメータ部の表示が「mV/μA」でしたが、この116Aでは「V/A」になっています。
ちなみに、1985年版カタログを見ると、115Aが\98,500-、116Aが\75,000-となっています。
115Aはセンターメータでしたが、この116Aは一般的なメータの動きです。
しかし、プラスマイナスの極性表示に特徴があります。
写真12のようにLEDが2個あり、極性によってどちらかのLEDが点灯し、極性が分かる仕掛けです。

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写真13は107Cの操作部です。
メーカーでの品名は「ボルト・オームメータ」です。
一般的に電子電圧抵抗計と呼ばれるもので、DC電圧、AC電圧、抵抗を測ります。
測定範囲は1.5V~1500V(DCのみ最低レンジ0.5V)で、これもプローブを用いて入力抵抗11MΩです。
抵抗測定用に単1乾電池1本をケース内に装着します。

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電圧の測定原理は図1のような方式と思います。
抵抗測定の原理はアナログテスタと異なるので、図2で説明します。
(107Cの回路図を見たことがないのですが、一般論として説明します)電源(直流、この例では1.5V)をレンジ切り替え抵抗を介して被測定抵抗Rxに印加します。

Rx両端電圧は抵抗値に比例しますので、これに応じた目盛をあらかじめ入れておけば抵抗値が分かります。

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アナログテスタにはゼロΩ調整がありますが、この場合、操作が異なります。
図3 a ) のようにプローブをショートします。
この状態がゼロΩになりますから、写真13の「ZERO ADJ」でメータゼロの位置に調整します。
次にプローブをオープンし、メータのフルスケール(∞)に「OHMS ADJ」で調整します。
アナログテスタの抵抗目盛は左端が∞ですが、電子電圧抵抗計では右端が∞です。
参考としてアナログテスタでの抵抗測定原理を図4に示します。

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