2015年10月13日

教育分野

懐かしのラジオでラジオの基本をおさらい 第1回

◎AMラジオ好き

筆者はラジオが好きで、特にAMラジオは仕事をしながら毎日聴いています。
ラジオは作ることも集めることも趣味の一つになっていて、リサイクルショップなどで古いラジオを見かけると思わず買ってしまいます。

写真1にコレクションの一部を示します。④のPanasonic RF-U700Aのみ現行機種で、仕事場ではこのラジで毎日AMラジオを聴いています。
①、②、③、⑤は自作の真空管式ラジオ、⑥の半導体式ポータブルラジオの中にはラジオキットも含まれています。

ラジオを聴くには④の最新式ラジオさえあれば十分なのですが、それぞれのラジオには特徴があり、ラジオ好きにとってはこれが面白いところです。
特に大相撲中継、高校野球中継などは真空管式ラジオで聴くことが好きで、半導体式ラジオにはない雰囲気が良いのかもしれません。

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①自作 5球スーパー
②自作 高1ラジオ
③自作 3球ラジオ(mT)
④自作 3球ラジオ(ST)
⑤Panasonic RF-U700A
⑥半導体式ポータブルラジオ
SONY TR-84
ACE AR-606 (6石スーパーラジオキット)
HOMER 4SP-420 (4石レフレックスラジオキット)
ACE AR-102K (1石ラジオキット)

現代のラジオは電子工作キットを除けばスーパーヘテロダイン方式です。
この方式は真空管式ラジオの時代からあり、それ以外の方式もあります。
それぞれの方式には特徴があり、感度、性能も異なります。
また、感度以外に混信を除去する能力などあり、受信環境などにより聴こえ具合が異なります。
私は関東地区在住ですが、比較的受信環境が良く、受信可能な放送局も多いです。
そこで、写真1の各種ラジオの感度、混信などを実際に受信して比較してみようと思います。
今回は真空管式ラジオの紹介です。

◎各真空管式ラジオ

★自作 5球スーパーラジオ

写真2に外観、図1にブロック図を示します。
真空管式5球スーパーラジオは製作された方も多いと思います。
mT管を用いた標準的な構成で1986年9月に製作したものです。
製作から数年後に秋葉原でマジック・アイを見つけて購入し、無理やり追加加工しています。

▽スーパーヘテロダインの動作原理

スーパーラジオ(スーパーヘテロダイン)については特別なものではありませんが、あらためて動作原理を説明します。
スーパーラジオはアンテナから入った信号(放送局)を一度低い周波数(これを中間周波数と言います)に変換し、これを増幅、検波する方式です。
感度を上げるためには増幅器を複数用い増幅度を上げれば良いのですが、この場合、周波数が高いと発振しやすくなります。
そこで一旦低い周波数に変換して増幅したほうが安定に動作し増幅度を上げることができます。
AM電波は図2のように搬送波と信号波で構成されています。例えば関東地区のTBSの周波数は954KHzですが、これが搬送波です。
検波はこれを信号波に変換することで、上下どちらかの波形を取り出し、さらに

搬送波を取り除けば信号波が得られます。これを検波(けんぱ)と言います。
ゲルマラジオなどは搬送波の周波数を変えないで検波しているのですが、スーパーラジオは放送局からの搬送波を中間周波数に変え、これを検波します。
搬送波の周波数をラジオ側で変えているわけですが、情報としての信号波の周波数は変わらないのでAM検波により信号波が再現するわけです。

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例えば図1で954KHzを受信する場合、局部発振器にて1409KHzを発振させ、これと混合して差の周波数(1409KHz-954KHz=455KHz)に変換します。
この455KHzが中間周波数になり、別の受信周波数の場合も常に中間周波数(455KHz)となるように局部発振器の周波数を変えます。
選局ダイヤルを回すことにより局部発振周波数を変えているわけです。
図1では周波数変換(455KHz)は一度ですが、短波受信機などでは変換を二度行う方式もあり、このようなものをダブルスーパー(ダブルコンバージョン)と言います。

図1の構成では真空管を5本用いています。用いる真空管の数(球数)によって「何球受信機」と呼ぶことがあり、図1では5本なので「5球スーパーラジオ(受信機)」です。
スーパーラジオの構成は必ず5本となるわけではなく、例えば電源部に真空管ではなくダイオードを用い、さらに検波、電力増幅部を1本の真空管で構成すれば「3球スーパー」になります。

写真2のように選局はバーニヤ・ダイヤルで行い、周波数表示されているわけではないので、紙に目盛に対応した放送局を紙に書いて貼ってあります。
スピーカ用の穴がいくつもあけられています。少し雑な加工になっています。まさか30年後に姿を公開することは想像できませんでした。
もう少し丁寧に製作すれば良かったです。

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▽マジック・アイ

写真3,4はシャーシの様子です。マジック・アイは製作後に追加したのでケミコンとコイルに接近し窮屈な部品配置になっています。
シャーシ内部は製作から30年ほど経過していますが、けっこうキレイです。

マジック・アイとは同調表示を行う真空管(同調指示管)で写真5に外観、図3に動作概要を示します。
上部のすりばち型の電極に蛍光物質が塗ってあり、扇型に光ります。この扇型の大きさはマジック・アイに加える信号電圧の大きさによって変わります。
信号が小さい場合は扇型が開き、大きい場合は狭まり、これにより同調を目で見ることができます。
写真6,7は実際の光具合で、放送局なしの場合は扇型が開いています。
放送局を受信すると電波強度により扇型が狭まり、同調操作を目で見ることができます。
現在でも安価なアナログ式ラジオなどではLEDによる同調表示機能がありますが、マジック・アイでは大きさで分かるので面白いです。

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★自作 高1ラジオ

スーパーラジオは一旦別な周波数(中間周波数)に変換した後、これを検波、増幅しますが、図4のように特別な操作をしないで基本的な構成にしたものをストレートラジオと言います。
ゲルマラジオは検波にゲルマダイオードを用いたもので増幅部はありませんが、b ) , c ) には増幅部があり、検波前の高周波部に増幅部をもったものを高1ラジオと言います。
一般的には高周波増幅の数は1段なので高1と呼び、2段(個)構成では高2です。
ストレートラジオに限らずスーパーラジオでも高周波増幅1段を付ければ高1スーパーラジオとなり、中間増幅の段数により高1中2スーパーラジオなどと呼びます。

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図5は自作高1ラジオのブロック図です。電源部にはダイオードを用いているので3球構成です。この場合、3球高1ラジオと呼ぶのでしょうか。

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写真8,9にシャーシの様子を示します。このラジオは2004年8月に製作したものでわりとキレイです。
作り方が悪く発振してしまい、仕方なくシールド板を追加しています。

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★自作 3球ラジオ(mT管)

図6にブロック図、写真10にフロント外観を示します。1987年8月製作です。

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再生検波についてはなじみのない方が多いと思いますので図7で説明します。
図7 a ) はグリッド検波と呼ばれるもので、グリッドとカソード間の2極管部で検波し、さらに3極管部で増幅します。
これに対し図7 b ) の再生検波と呼ばれる方式はプレートからコイルL3を経由してL2に結合させます。
プレートは出力側ですからこれを入力側のグリッドに信号を戻すことになり、これを帰還(フィードバック)と言います。
帰還には負帰還と正帰還がありますが、この場合、正帰還となるような位相関係で戻します。

戻された信号は正帰還の関係ですから、これをさらに増幅することになり出力が増大します。
ただし、このままでは発振してしまうので帰還量をVC2にて調整することにより感度が上がります。
このような方式を再生検波と言い、感度アップと選択度の向上につながります。

選局操作は少し面倒です。マジック・アイ付の5球スーパーなどは選局ダイヤルを回してマジック・アイが一番閉じたポイントに合わせれば良いのですが、再生式では発振(ピーー音)寸前で再生バリコンを調整し、この時が最大感度です。

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図7 b ) のように帰還させるためにはコイルL3が必要なのですが、このようなコイルは以前に販売されていました。その製品例を写真11に示します。
「並四コイル」と呼ばれるもので、L1,L2,L3がすでに巻かれた部品です。
3球ラジオの回路図付のデータシートが添付され、1957年初版発行と書かれています。
部品はきれいなのですが、データシートが茶色に変色しています。

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★自作 3球ラジオ(ST管)

写真13はST管を用いた3球ラジオです。
(1988年8月製作)構成は図6のmT管を用いたものと同じ再生式で回路もほぼ同じです。
私はmT管の世代です。ST管を用いたラジオ製作の経験がなかったのでmT管3球ラジオの次に製作したものです。
ST管は存在感がありますね。

写真14に主な真空管の形状を示します。
年代の古い順に、ST管→GT管→mT管となり、サイズが小さくなっています。
私が生まれた時にはテレビはありませんでした。
ラジオは真空管式で部屋の高い位置に設置されていた記憶があります。
さすがにST管ではなくmT管のスーパーラジオです。
このころはトランジスタ(トランジスタとは半導体のことではなくポータブルラジオの意味として使われていた)の時代になっていたので、家の真空管式ラジオを聴いた記憶があまりありません。
そういえば、ポータブルラジオのことをトランジスタと言う人をみかけなくなりました。
最近は「コンパクトラジオ」、「ポケッタブルラジオ」、「ハンディーポータブルラジオ」、「ポケットラジオ」、「ポータブルワンセグ対応ラジオ」などさまざまな表現です。

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▽懐かしのラジオ工学教科書

以上、感度比較に用いる真空管式ラジオを紹介しました。
回路図は公開しませんが、製作に用いた回路は写真15のラジオ工学教科書に掲載されているものです。
通信教育の教材で、第1巻~6巻の6冊構成です。
電気の基礎から始まり、真空管の動作原理、各種ラジオの製作、オーディオ装置などが解説されています。

各年代を一緒に撮影してみました。昭和43年発行のものは私がリアルタイムで通信教育に用いたもので、昭和23年、昭和29年発行は古本屋さんで購入しています。

昭和23年発行は印刷があざやかなカラーではありません。
工学の学が「學」です。電氣→電気、眞空管→真空管などは難なく読めるのですがどうしても読み方が分からない漢字がいっぱいあります。
一番気になる言葉が「電流を音波に変える高○器とから成り立っています」で、○の漢字は上部左に声と右に股の月を取ったもの、下部は耳。
どうしてもこの字が読めなく他の巻を読んでいくうちに、どうもこの字は声に相当するようです。結局、高声器→スピーカ ということです。

表1に専門用語を示します。可熔片は「かようへん」と読むのでしょうか?。これはヒューズのこと。
ストッピング・コンデンサ、デカップリング・コンデンサは今でも用いるので漢字表現も分かります。
ワープロがあまり普及していなかった時代、部品表の作成は手書きでした。
抵抗などの部品点数が多い場合、カーボン抵抗は「炭素皮膜固定抵抗器」という文字をゴム印で作り、これで作成していました。
バリオデンサーはトリマ・コンデンサのことで、これは知りませんでした。
私が電子工作を始めた子供のころ、バリオームという部品名が分かりませんでした。これ、ボリュームのことです。

低周波変成器は低周波トランスのことですが、オージオ・トランス(Audio Frequency Transformer)と書かれています。
オーディオよりオージオのほうがおしゃれですね。
ところどころ前の所有者の書き込みがあり、達筆です。昭和43年発行にもありますがこちらの字は?

表1 難しい専門用語

高声器 スピーカ
可熔片 ヒューズ
阻止蓄電器 ストッピング・コンデンサ
減結合蓄電器 デカップリング・コンデンサ
小型可変蓄電器 バリオデンサー (Variodenser)

写真16は古い雑誌です。NHKのラジオ受信機講座の中で「受信機の変遷」について解説されています。
大正14・15年ごろにアメリカから輸入されたスーパーラジオの回路図が紹介されていて、現在のスーパー方式とは少し異なります。
昭和7年ごろの回路図もありますが、局発の回路が現在と異なります。

昭和30年版のラジオ受信講座裏表紙にマジック付6球スーパーキットの広告があり、¥3,800です。
現在の価値に換算するとどれくらいになるのでしょうか。

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次回は比較に用いる半導体式ラジオの紹介と比較レポートを行います。

・参考資料・文献
「ラジオ工学教科書 第1部」財団法人ラジオ教育研究所 昭和23年、29年、43年
「ラジオ設計自由自在 ①真空管受信機編」 奥沢清吉 著 誠文堂新光社 昭和36年

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