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7MHz AM送信機の実験(その3)2次試作 制御回路編

前回は1次試作を行いました。結果はさんざんなものでしたが、それによる変更、追加を2次試作に反映して実験を進めます。

 

◎制御方式の検討

★スイッチでCAL/REC/SENDを切り替える

送信機と受信機が別でもアンテナは共有します。
したがって、図10のようにアンテナ切り替えが必要です。
しかし、このままですと送信時に自身の送信電波も受信してしまいますので、受信機はスタンバイ状態になることが望まれます。
また、送信機と受信機の周波数を一致させるキャリブレート操作も必要です。
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そこで、送信機の各ブロックの動作切り替えを検討しておく必要があります。送信機を受信機(9R-59D)と組み合わせた場合、送信(SEND)、受信(REC)、キャリブレート(CAL)の3状態が必要で、送信時のスイッチ状態を図11に示します。
各スイッチポジションはSENDをS、RECをR、CALをCで表現しています。送信時は以下の状態が必要です。

①送信機をすべて動作状態にする。
S1~S3はSポジション
②アンテナ(ANT)は送信機側。
S4はSポジション
③受信機をスタンバイ状態にする。
S5はOFFにして受信機内部の電源をOFFにする。

受信機をスタンバイ状態にするには2つの方法があります。

その1つは図12のようにリモート機能を用いる方法です。
TX-88DSは送信時にリモート端子に-100V(DC)を供給する回路になっていて、これを受信機のAVC回路に接続すれば受信機がスタンバイ状態になります。
この方法は送信機側にて-100Vを用意する必要があり、今回の実験機ではそれは出来ません。

もう1つは受信機のB電源を制御する方法です。
9R-59DはFUNCTIONスイッチにてSENDのポジションがあります。
このポジションでは高周波段のB電源がOFFとなり、受信が一時停止します。
つまり、送信時にこのポジションにすれば良いわけですが、この操作は手動です。
したがって、この機能を自動的に行う必要があります。
今回はB電源のON/OFFによる制御を行う方法にします。

 

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参考として写真9にTX-88DSのCAL/REC/SENDスイッチを示します。
このスイッチはシーメンス・キーです。レバーの倒れ角度が大きいので各ポジションの位置が分かりやすいです。

最近、シーメンス・キーを見かける機会が少なくなってきました。写真10に内部の様子を示します。
操作レバーを動かすと、内部のローラーのようなものがポジションにより各接点をON/OFFする構造です。

 

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写真10の具体的な動作状態を図14に示します。
操作レバーを動かすことにより、中のローラー(絶縁物)も連動し、これが各接点を動かします。
例えば中央の位置ではローラーは各接点に影響を与えず、2-3と4-5は機械的に接触し、ONです。
上側では2-3はONのままで、5の接点をローラーで下側に動かし、6と接触します。
つまり、このポジションでは2-3と5-6がONです。
下側では4-5はONのままで、ローラーが2を押し上げて1-2がONになります。
写真10のものは図14の回路がもう1組あります。

 

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★各スイッチの動作を整理する

写真10のシーメンス・キーを図11の制御にそのまま用いても、少し回路数が足りない気がします。
そこで、各スイッチ動作を整理してみます。

図11のようにSEND/REC/CALの3状態を考えるとスイッチは3ポジションになりますが、必ずしも3ポジションである必要はないことが分かります。
例えば、S1とS2はSENDとCAL時に必要な信号を供給すれば良いわけで、スイッチは2ポジションです。
また、S3はSEND時に必要な信号を供給できれば良いことが分かります。
図15に各スイッチをリレーに置き換えた場合を示します。
図11では3ポジション5回路の特殊なスイッチが必要ですが、図15では一般的なリレーで済むことが分かります。
なお、リレー接点の黒丸はリレーに電源を供給しない状態を示しています。

 

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結局、各動作モードではスイッチを表1のようにすれば良いことが分かります。

表1

S1 S2 S3 S4 S5
CAL ON ON OFF OFF OFF
REC OFF OFF OFF OFF OFF
SEND ON ON ON ON ON

 

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★制御回路

今回は実験なのでCAL/REC/SENDに特別なスイッチを用いないで、一般的なものを採用することにします。
図17に3ポジショントグルスイッチの状態を示します。
一般的に、中央ではすべての端子がどこにも接続されません。
上側では1-2がON、下側では2-3がONになります。
機能動作では ON OFF ON などと表現されます。

 

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このような性質(状態)を利用し、スイッチのポジションを電気的に検出する方法を図18に示します。
スイッチの共通ピンである2ピンをGNDに接続し、他のピン(端子)を抵抗を介してVcc(電源)に接続します。
このようにすれば、接点の状態によりA点およびB点はデジタルのHおよびLで検出することができます。

例えば、ポジションが上側の場合、1-2がONとなってA点はGNDに接続され、これはデジタル的にLレベルです。
3ピンはVcc→抵抗の経路でオープンになりますから、これはデジタル的にHレベルです。
各状態をまとめたものを表2に示します。

 

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表2

A B スイッチ 状態
L L 無し 無し
L H CAL
H L SEND
H H 中央 REC

A = B = L の状態は存在しない

図19は図15をデジタル的に見たものです。
S1,S2はSENDまたはCALの時にスイッチONしますので、これはOR(オア)です。
したがって、A点、B点の信号をORしてリレーを駆動すれば良いわけです。
S3,S4はSENDのみですから、A点またはB点どちらか都合の良い論理を用いれば良いことになります。
ここまではリレー制御のみの話しですが、今回はスイッチポジションをLEDで表示する必要があります。
シーメンス・キーであればポジションが分かりやすいのですが、トグルスイッチでは分かりにくいです。

 

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スイッチ中央のRECは表3のように A = B = H ですからAND(アンド)です。
RECはリレー制御はしないでLED表示だけなので、ANDをとったものでLEDを点灯すれば良いことになります。

表3

A B スイッチ 状態
L L 無し 無し
L H CAL
H L SEND
H H 中央 REC

 

◎用いた回路

★使用IC

電源電圧が12Vなので、この電圧で動作するロジックICが必要になります。
今回は4000シリーズのロジックICを用いています。
このシーリーズのICは動作電圧が3V~18Vと広範囲なのが特長です。
制御回路を図21に示します。
4011BはNAND(ナンド)です。表3のようにA,Bの両方の入力がHの時に出力YがLになります。
これを回路シンボルで表現すると図20 a ) になります。
また、表3から分かるようにどちらかの入力がLであれば出力YはHになり、これはORでもあるわけで、ORで表現したものが図20 b ) です。
また、図20 c ) のように入力を接続すればA,Bには同じ信号が入力されますから、これはNOTになります。表3 4011Bの真理値表

A B Y
L L H
L H H
H L H
H H L

 

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TD62004はトランジスタアレイと呼ばれるもので、図21ではNOTで表現していますが、中身は図25のようにダーリントントランジスタです。

▼【TD62004AP】
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/106426/

スイッチング回路になりますので、入力(IN)にHレベルまたはLレベルの信号を加えることにより出力(OUT)がON/OFFします。
今回用いたリレーの定格電流は41.7mAです。したがって、4011Bでは駆動することができません。
そこで、駆動能力の高いトランジスタアレイを採用しています。
TD62004は7回路入りで出力駆動能力は500mA/chと十分です。
また、パッケージがDIP16なので配線が楽です。
TD62004は入力HでリレーONまたはLED点灯しますので、4011Bからの出力もHの時に意味を持つことになります。

 

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★CAL時の動作

CAL時の動作を図22で確認します。

スイッチの1-2がONなのでCAL(A)=L、SEND(B)=Hです。G1はNOTですからその出力はHとなってTD62004が動作し、CALのLEDが点灯します。

SEND(B)はHなのでG2の出力はLになりますから、SENDのLEDは消灯、RL2はOFFです。
また、G3はCAL(A)がLですから負論理入力のORが機能し、G3出力がHとなってRL1がONし、これによりキャリブレート動作になります。
G4はG3出力をNOTしたものなのでRECのLEDは消灯です。

 

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★REC時の動作

RECはすべてのリレーがOFFでRECのLEDのみ点灯します。
スイッチポジションが中央ですから、CAL(A)とSEND(B)はどちらもHです。
G1とG2はNOTですからその出力はLとなって、CALおよびSENDのLEDは消灯し、RL2もOFFです。
G3は入力がどちらもHですから出力はLとなり、RL1もOFFです。
G4はG3出力をNOTしたものですから、TD62004の入力がHとなってRECのLEDが点灯します。

ここで少し追加説明しますと、G3の役目はCALとSENDの検出です。
スイッチはLの時に意味がありますので、G3を負論理入力のORにしてあります。
G4はG3をNOTしたものなので、別な表現をすればG4出力はCALまたはSENDではないことを意味し、これはRECです。

また、前記表3のようにRECはA,BのANDをとったものですが、図25のようにG3+G4は結局、ANDになっています。

 

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★SEND時の動作

SENDはすべてのリレーをONし、SENDのLEDを点灯させます。
この場合、CAL(A)はHになるのでその接続先は意味のないものになります。
SEND(B)はLですからG2出力がHとなって、SENDのLEDが点灯し、RL2がONします。
G3は片方の入力がLですからG3出力のHでRL1がONします。
G4はG3のNOTですからRECのLEDは消灯します。

 

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以上、制御方式の検討、設計を行いました。他に簡単にできる方法があるかもし
れません。次回は送信機本体の設計、製作に進みたいと思います。

 

▼続きは その4 2次試作 制御回路編 です。

その1 構想編

その2 1次試作編

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