2015年06月17日

デバイス

7MHz AM送信機の実験(その4) 2次試作 設計・製作編ーフェアチャイルド KSC1815活用

前回は制御部の検討および設計を行いました。今回は送信機本体を設計し、動作確認、評価を行います。

 

◎回路

★送信部

図25に示します。構成は1次試作と同じなのですが、発振のQ1、ドライブのQ2にフェアチャイルドのKSC1815を用いています。2SC1815と互換品のようで、ピン配置も同じです。クリスタルX1は7.195MHzです。一般的な回路なのでここでは特に詳細な説明はしませんが、RL1AとRL1Bは2回路のリレーで、前回レポートの図19のS1,S2に相当します。また、RL2A,RL2Bも2回路で、S3,S4に相当します。Vcc(電源)は12Vです。
▼KSC1815
http://www.marutsu.co.jp/SearchCategoryList.jsp?path=&q=KSC1815

 

D1,D2からなる部分は出力の監視回路です。C18の小容量のコンデンサで送信出力を取り出したものをD1,D2,C19にて整流してDCに変換します。これをラジケータにて監視します。
Q3からの出力はスプリアス減衰用LPF(ローパスフィルタ)を通った後にRL2Aを介してアンテナへ接続されます。L2,L3,L4はトロイダル・コアのT50-2に線を巻いて作り、巻き数は14回ですが、これをインダクタンス値にしたものを図26に示します。
入出力は50Ωの設計で、これをLtspiceにてシミュレーションした結果をデータ3に示します。おおよそのカットオフ周波数は約10MHzです。

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T1,T2はφ8のボビンを用いての手作りです。再現性がないかもしれませんので、ここでは巻データは公開しません。

 

 

主なキーパーツを表4に示します。

表4 送信部 主なキーパーツ
型番メーカー
トランジスタ KSC1815 フェア
トランジスタ 2SC3421 東芝
リレー G5V2DC12V OMRON
放熱器 17P23L25 LSI
トロイダル・コア FT-50-61
トロイダル・コア T50-2

 

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★変調部

コンデンサマイクを用いるのでバイアス抵抗R10が必要です。
今回用いたコンデンサマイクは特別なものではなく、マルチメディア用と呼ばれるもので、動作電圧4.5V、負荷抵抗2.2kΩの仕様です。ツェナーダイオードZD1にて4.3Vにしたもので電源供給しています。

Q4の役目は前回レポートのように増幅ではなく、インピーダンス変換が目的です。
エミッタフォロワを通して音声用LPFに接続します。変調アンプはNJM386を用いて簡単に済ませています。また、この部分のゲインは46dBの設定とし、音量ボリュームは設けていません。

コンデンサの0.1μFは種類が違うものを使い分けています。C24,C25は容量誤差±5%のマイラーコンデンサを用い、その他の0.1μFはセキセラの±10%品です。

 

表5 変調部 主なキーパーツ
型番メーカー備考
マイラーコンデンサ0.1uF EOL100P10J0-9 FARAD C24,25
アウトプットトランス ST-41A SANSUI
オーディオパワーアンプ NJM386BD NJRC
チョークコイル 50mH TR50MH

 

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★制御部

制御部は前回レポートのようにロジック回路で設計し、この部分はユニバーサル基板にて製作しています。

各部の接続を図28に示します。9R-59D側にRL3を実装し、SEND時のみ9R-59Dの高周波段のB電源をOFFします。

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◎基板

図29にシルク図(部品配置図)を示します。
制御部のリレーなどが追加になっていますので、1次試作時より大きなサイズになっています。用いた感光基板はサンハヤトのNZ-P12Kです。
送信部および変調部もそれぞれ直線的に配置できればよかったのですが、特に変調トランス(ST-41A)が基板中央の左に配置されています。リレーの位置関係が少しすっきりしないのですが、とりあえず、これで進めることにしました。

7MTX4_006

 

◎ケース加工

図30にケース構造を示します。実はこの実験を思いついた時に用いるケースは決めていました。LEADのアルミシャーシS8をベースとすることで、これにアルミ板をフロントと見立てるデザインです。
▼アルミシャーシ 180×50×120【S-8】
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/16041/

 

基板(NZ-P12K)はシャーシ内部ではなく、シャーシ上に実装します。

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◎製作

写真12,13に基板の様子を示します。写真12は調整完了後なので図29と若干の部品配置が異なります。

7MTX4_009

 

写真14はフロントパネルの様子で、テプラで文字を入れてみました。

マイク用コネクタは絶縁タイプのφ3.5ステレオジャックです。CAL/REC/SENDスイッチはミヤマのMS500CMFを採用してみました。フラットレバーなので操作性は良いのですが、レバー色に青などがあると良いと思います。
▼トグルスイッチ 単極 ON-OFF-ON【MS-500C-MF】
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/5411/

 

写真15はリアの様子で、9R-59Dの制御用コネクタには絶縁タイプのφ3.5モノラルジャックを用いています。

 

7MTX4_010

 

 

◎調整、測定

写真16に調整風景を示します。
発振周波数は写真17のように7.195002MHzとなりました。この周波数は送信部回路のC1,C3,T1で調整します。

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送信出力は写真18のように約700mWです。

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データ4に変調波形を示します。音声の替わりに1KHzの正弦波で変調したAM波形です。それほどひどい波形ではないと思います。

この観測のときに気づいたのですが、変調トランスとマイク用LPFのL5が近いと影響しあいます。できれば図31のような位置関係が良いです。

 

7MTX4_013

 

データ5はスプリアス特性で、基本波に対して第2高調波は約-48dBです。
これについては調整またはカットオフ周波数の移動などで改善されるのですが、今回はこのレベルでOKとしておきます。

 

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データ6は送信部LPFの実測値です。ほぼ、シミュレーションに近い特性です。

 

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データ7はマイクアンプ部の周波数特性の実測値です。コンデンサマイクの替わりに低周波信号発生器を接続し、R16のポイントでの特性です。これについては1次試作編でシミュレーションを行っています。ほぼ、シミュレーションどおりの結果です。

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表7は各モードにおける消費電流の実測値です。測定は用いた電源の電流表示値です。

 

表7 消費電流
MODE消費電力備考
CAL 90mA
REC 20mA
SEND 360mA 無変調
SEND 450mA 1KHz,50%変調
SEND 520mA 1KHz,100%変調

 

 

◎評価

特性等、ほぼ設計どおりになっていることが確認できましたので、各種評価します。

 

★AMの音

実際に運用してのレポートはできていないのですが、受信側にYAESUのFRG-965を用い、ICOMのIC-726Sと比較してみました。結果、思ったほど悪くありません。

IC-726Sは個人的には中域がきれいに感じられ、了解度が良い印象です。2次試作機は低域が少し出すぎて、かえって了解度が落ちる気がします。ひいき目に見ると、2次試作機は深い変調なのですが、IC-726Sと比較すると少しひずんだ印象です。

試しに受信側に9R-59Dを用いて比較しました。この場合、2次試作機の低域の出すぎと9R-59D本来のハム音に懐かしさを感じ、好きな音です。AMは相手機(受信)により音の印象が変わる気がします。
最新の無線機で受信すれば音も変わってくるのかもしれませんが、筆者の勝手な音質評価と思ってください。マイクアンプ部のフィルタはLPFがLCによるもの、HPFは簡易的なCRによる方法ですが、HPFにきちんとしたものを設けた場合、どのように音質が変化するか興味深いところです。

 

★変調部のゲイン不足

変調部のマイクアンプはエミッタフォロワです。1次試作においてNJM386でゲインを+46dBにすればこれで良いと判断したのですが、少しゲイン不足を感じます。

図32のようにコンデンサマイクからの信号をオペアンプにて増幅し、低インピーダンスでLCフィルタに接続し、さらにバッファーを介してマイクボリュームに接続する改善方法が考えられます。

7MTX4_017

写真19は比較風景です。9R-59Dが2台写っているのは上段のほうを今回の改造対象にしていて、なぜかアンテナ端子にM型コネクタが実装されていたからです。

アンテナ端子はジョンソンターミナルがオリジナルだと思うのですが、前の所有者がM型コネクタを追加したのかもしれません。

 

写真20のように用いたマイクはマルチメディア用のコンデンサマイクです。ラジケータは半固定ボリュームVR1を絞り切ったポイントでフルスケールの70%あたりで振れます。R9の値が少し大きすぎたようです。この値を小さくすればフルスケール付近まで調整することができますが、メーター位置が丁度良いので定数変更はしていません。

このメータを付けたのは正解でした。出力が本当に出ているのかすぐに分かります。

 

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◎まとめ

とりあえず、AM電波が出るレベルまで実験、製作することができました。安易なネーミングですが、2次試作機を「TX2014A」と名付けました。

2014年最初の送信機ということで1次試作機をTX2014とし、それの改良である2次試作機をTX2014Aとしました。
このレポートを書いているのが2014年12月なのでTX2014はこれで終わりです。

写真19を眺めて思いつきました。9R-59Dラインアップすべてを自作に置き換えら面白いかもしれません。今回はTX-88DSの替わりとまではいきませんが、とりあえず、送信機は実験、製作できました。残っているのは以下のとおりです。

 

①受信機 9R-59D
②VFO VFO-1
③プリセレクター SM-5
④コンバータ CC-26

 

すべてのバンド対応は難しいので、7MHz帯だけでも良いかなと思います。例えば、受信機とプリセレクターは7MHz帯専用。コンバータは50MHz→7MHz変換。VFOはアナログ式ではなくDDSで組んだほうが簡単です。TX2014A専用電源もあると良いかなと思います。

SSB送信機(またはトランシーバ)となると、部品の問題、技術の問題などで自作は難しいものです。これに対してAMは今回のレポートのように特別な部品を必要とせず、簡単に自作することができます。

7MHz帯でのAM運用を知るまではAMに関してあまり興味がなかったのですが、趣味が一つ増えました。

 

その1 構想編

その2 1次試作編

その3 2次試作 制御回路編 はこちらです。

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