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電子工作に必要な工具の種類と使い方 その1【ハンダ付け編】

電子工作をするには、さまざまな種類の工具があり多くのメーカーもあってどれを選べばよいか迷ってしまいます。

また、実際にどのように使用するのか、こんな時はどの工具を使えばいいのか場面に合わせた工具とその使い方の紹介をします


今回は、ハンダ付けについて説明いたします。

 

1.ハンダ付け

 

電子工作で、まず最初の難関がハンダ付けです。

ハンダ付け不要の商品も多くありますが、やはり満足感を得るには自分で部品をハンダ付けして組み上げるのが一番です。

また、ハンダ付けができるようになれば、故障の修理や、部品を交換して性能(音質など)を変える楽しみも生まれます。

 

(1)必要な工具

ハンダ付けに必要な工具は、写真のようにたくさんあります。ひとつづつ説明します。

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1.ハンダごて

ハンダ付けには必須ですが、このように温度調節が可能なハンダごてが1本あれば、いろいろな場面で使用できます。

 

・HAKKO    温調制御はんだこて 200℃〜500℃(平型プラグ)【FX600-02】

 

2.ハンダごて台

ハンダごては、たいへん熱くなりますので、やけどや、火災の危険がないようにしっかりしたハンダごて台が必要です。

台の上に置くだけのタイプもありますが、このようにこてを包み込むタイプが安心です。

 

・HAKKO  こて台【633-01】

 

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3.ハンダこて先

ハンダごてのこて先は、消耗品です。

後で説明するようにきちんとメンテナンスしていればそれほど劣化はしませんが、ダメになってから購入するのは時間がかかってしまうので、予備に1本購入しておくのが良いと思います。

また、面実装タイプの部品をハンダ付けする場合は、このように先の形状が違うタイプがありますので、面実装される方はこちらも準備してください。

 

・HAKKO こて先 B型 【T18-B】

・HAKKO こて先 1.2D型【T18-D12】

 

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4.ハンダ

ハンダには、その太さによる違いの他、鉛入りと鉛フリーの2タイプがあります。

写真のハンダは、鉛フリーの0.6φと0.8φのものですが、一般部品には、0.8φ 面実装などの小さい部品には、0.6φを使用するのが作業しやすいです。

 

・ 太洋電機産業 鉛フリー用高密度集積基板用はんだ【SD-51】

・ 太洋電機産業 鉛フリー用高密度集積基板用はんだ【SD-52】

 

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5.ハンダ吸い取り器

ハンダ付けで、部品を間違えた時や、ハンダを付け過ぎた時、部品を交換したい時など、この吸い取り器があると便利です。

 

・ PROS KIT はんだ吸取り器【DP-366C】

・ HAKKO 簡易はんだ吸取器 ハッコースッポン20【20】

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6.ハンダ吸い取り線

面実装部品のICやコネクターのピンにまたがってハンダ付けしてしまった場合は、吸い取り器では難しいので、このハンダ吸い取り線が活躍します。

 

・HAKKO はんだ吸取り線【87-3P】

 

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7.ハンダペースト フラックス

ハンダペーストは、ハンダ付けする部品と基板などにハンダが着きやすくするためのものです。

普通にハンダ付け作業する場合は後で説明しているとおりハンダに含まれているため必要ありません。

ハンダペーストには、用途別に種類がありますので、注意してください。

写真左側のBS-10は、基板に部品をハンダ付けするのには向きません。

大きな金属どうしのハンダ付けなどの時に使用します。

電子部品、基板には使用できないので注意してください。

 

基板用には、FS200というフラックスがありますが、電子工作では必要ないでしょう。

 

・ハッコー FS-200 フラックス 20ml 電子部品・PCB用【FS200-01】

 

もうひとつのFS100は、ハンダごての酸化防止に使用します。

こまめにメンテナンスすればこて先の寿命が延ばせます。

 

・HAKKO ケミカルペースト【FS100-01】

 

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 (2)ハンダ付けの方法

 

これからハンダ付けをする方法を説明しますが、ハンダ付けの上達のポイントは、とにかくたくさんハンダ付けをして経験を積むことです。

ここに書いてあるポイントをふまえた上で、たくさんハンダ付けにチャレンジして電子工作の醍醐味を堪能してください。

 

1.まずハンダ付けする場合の温度の話をします。

ハンダのケースを見ていただくと、融点温度が書いてあります。

この鉛フリーのハンダは、融点が216℃~227℃と書いてありますね。

ちなみに、鉛入りのハンダの一般的な融点は183℃です。

融点というのは、ハンダが溶け始める温度ですので、実際にハンダ付けする場合は、融点よりも40℃~50℃ぐらい高い温度が作業性が良いと言われています。

ですから作業しやすいハンダの温度は、鉛入りで230℃程度、鉛フリーでは、270℃程度という事になります。

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しかし、ハンダごての設定温度をこの温度にすれば良いという訳ではありません。

ハンダごての温度がそのままハンダの温度にはなりません。

ハンダごてからの熱が全てハンダには伝わらないですし、ハンダ付けする部品や基板に熱を取られてしまいます。

一般的には、作業しやすいハンダ温度の+100℃といわれています。

そうすると、鉛入りで330℃、鉛フリーで370℃という事になります。

 

しかし、今回紹介しましたハンダごては、熱復帰率(ハンダ付けする時に温度が下がった時にもとの温度に戻る時間)が良いものですので、鉛入りと同じ330℃程度で十分使用する事が出来ます。

 

<ポイント1>ハンダごての設定温度は、330℃程度(320℃のメモリがあります)にしておけば良い。

※実際にハンダ付けした時にハンダが溶けにくかったりする場合は、臨機応変に温度を調整してみてください。

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2.次にハンダの話です。

ハンダには、鉛入りと鉛フリーがありますが、作業性が良くて、こて先の酸化もしにくいのは鉛入りのほうです。

電子工作で使用する程度でしたら、鉛入りでも多大な環境破壊はしないと思いますので、鉛入りを使用しても良いと思います。

でも今後鉛入りは少なくなっていくでしょうから、今回は鉛フリーハンダを紹介しています。

 

ハンダの中には、やにが入っています。活性化ロジンと書いてありますが、これはフラックスと呼ばれるもので、ハンダを付けやすくする物質がハンダの中に予め入っています。

この活性化ロジンは、温度が上がると活性化して金属表面の酸化膜を溶かしてハンダが着きやすくする役目をしています。

しかし、温度が上がり過ぎると機能しなくなるため、ハンダごてにハンダを乗せたままにしているとハンダ付けがしにくくなってしまいます。

ハンダ付けする時は、その場でハンダを溶かしながら行うのはこのためなのです。

 

<ポイント2>ハンダ付けする時は、ハンダをハンダ付けする部分に近づけて溶かしながらハンダ付けを行う。

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3.最後はメンテナンスの話です。

ハンダごてのこて先は、むき出しのままですと、酸化してハンダが乗らなくなったり、腐食したりしてしまいます。

従って、ハンダごてのこて先は常にハンダがついている状態に保っておく必要があります。

 

<ポイント3>ハンダごてを使用する時にこてが温まったらまずハンダをのせてこて先にハンダをつける。 

<ポイント4>ハンダ付け作業が終わったら、こて先にハンダをつけてから電源を切る。

 

特に鉛フリーのハンダの場合は、こて先のハンダが無くなると酸化が促進されますので、FS100のようなペーストを使用してください。

ハンダごてが温まっている状態(300℃程度)で、このペーストをつけて、そのあとこて台についているクリーニングワイヤーでペーストを拭き取って、最後にハンダを乗せて電源を切ります。

 

こて先のクリーナーには、スポンジタイプ(水を入れて使用する)もありますが、このタイプはこて先のハンダを取り除いてしまいますので、鉛フリータイプのハンダを使用する場合は、このこて台のようなワイヤータイプのものがハンダが残るので適しています。

 

しかも、このこて台【633-01】に付属しているクリーニングワイヤーにはフラックスが含有されていて、FS100が無くてもある程度こて先を守ります。

 

(3)実際のハンダ付け作業例

 

①まず最初にハンダごてが温まったら(FX-600の場合LEDが点滅します。)ハンダのこて先にハンダを乗せます。

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②実際に抵抗をハンダ付けする場合です。ハンダを溶かしながらハンダ付けします。

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部品をハンダ付けする時に便利なアイテムがヒートクリップです。 熱から部品を守ります。

・太洋電機産業 ヒートクリップ【H-2SL】

 

ハンダ付けの手順は、まず最初にハンダ付けする部品やパターンをこて先で温めて温度を上げた状態で、ハンダを溶かしながら流し込んで

適量になったらハンダを遠ざけてちょっとひと息程度温めたところでハンダごてを外します。

何度か練習してコツをつかんでください。

 

③面実装部品の場合は、こて先を変更します。

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④先が平らなので、ICや、チップ部品がハンダ付けしやすいです。

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面実装部品をハンダ付けする場合は、部品を固定するのに先の平たいピンセットが便利です。

・HOZAN ヘラ型ピンセット【P-888】

面実装のICなどを熱から守るのにもヒートクリップは使用できます。

・太洋電機産業 ヒートクリップ【H-2SL】

 

面実装が初めての方にお勧めなキットを紹介します。USBヘッドホンアンプキットです。

詳しい作り方もありますので、挑戦されてみては如何でしょうか?

・USB-DAC内蔵ヘッドフォン・アンプキット(含 面実装キット)【MHPA-PCM2705U(R2)-FK】

・MHPA-PCM2705U(R2)の作成方法 その1 その2 その3 その4 音質改善

 

⑤端子などの大物をハンダ付けする場合は、先に端子とワイヤーにハンダを付けておくとうまくできます。

大物部品のハンダ付けには、少し設定温度を高めにします。

 

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★ハンダごての設定温度を高くした場合は、使用後にすぐに低めに戻しましょう。

また、使用後は早く電源を切りましょう。高温が継続するのが、こて先の酸化に影響するためです。

 

⑥ハンダ吸い取り器の使い方。

ポンプをロックするまで手で押し込みます。

そして外したい場所の近くに解除ボタンを押せる状態で構えます。

ハンダごてで外す部分のハンダを溶かします。(この時十分ハンダが溶けるようにこて先を押し当てます)溶けたら素早く吸い取り器の吸い込み口をハンダに当ててロックを解除します。

 

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<ワンポイント> 基板の穴がスルーホール(穴の中側も導通している)の場合は、少し時間を長く溶かす必要があります。

また、ハンダのついている面積が小さい場合に十分に熱が伝わらない事がありますので、その場合は、少しハンダを盛って(増やして)から行うとうまくいきます。

 

⑦ハンダ吸い取り線の使い方。

パターンが小さくて隣とハンダがくっついてしまった時などにハンダを吸い取る事ができます。

吸い取る箇所の上に吸い取り線を被せて、その上からハンダごてを当てれば溶けたハンダが吸い取り線にくっつきます。

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⑧その他 便利な商品

ハンダ付けする時に便利な商品を紹介します。

 

拡大鏡付きハンズフリーツール

これは、拡大鏡がついていて、基板が固定できますので、ハンダ付けする場合に両手が使えて大変便利です。

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・Linkman 拡大鏡付き ハンズフリーツール【FZ1090】

 

ヘッドルーペ

セットの中を覗き込んで作業する場合に役に立ちます。

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・エンジニア ヘッドルーペ 3.5倍【SL-83】

 

<関連記事>

 

・ 電子工作に必要な工具の種類と使い方 【ワイヤー処理編】 【測定編】 【穴あけ編】

 

<今回ご紹介した工具一覧>

 

・HAKKO    温調制御はんだこて 200℃〜500℃(平型プラグ)【FX600-02】

・HAKKO  こて台【633-01】

・HAKKO こて先 B型 【T18-B】

・HAKKO こて先 1.2D型【T18-D12】

・太洋電機産業 鉛フリー用高密度集積基板用はんだ【SD-51】

・太洋電機産業 鉛フリー用高密度集積基板用はんだ【SD-52】

・PROS KIT はんだ吸取り器【DP-366C】

・HAKKO 簡易はんだ吸取器 ハッコースッポン20【20】

・HAKKO はんだ吸取り線【87-3P】

・ハッコー FS-200 フラックス 20ml 電子部品・PCB用【FS200-01】

・HAKKO ケミカルペースト【FS100-01】

・太洋電機産業 ヒートクリップ【H-2SL】

・HOZAN ヘラ型ピンセット【P-888】

・Linkman 拡大鏡付き ハンズフリーツール【FZ1090】

・エンジニア ヘッドルーペ 3.5倍【SL-83】

 

 <ハンダ付けのが体験できるお勧めキット>

 

LV-2.0PREMIUMキット ステレオプリメインアンプ【LV2-KIT-PREMIUM】

LV-2.0MINIキット ステレオプリメインアンプ【LV2-KIT-MINI】

USB-DAC内蔵ヘッドフォン・アンプキット(含 面実装キット)【MHPA-PCM2705U(R2)-FK】

USB-DAC内蔵ヘッドフォン・アンプキット(面実装済み)【MHPA-PCM2705U(R2)-KIT】

LV-2.0 フォノイコライザーキット【LV2-PE-KIT】

 

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